
大変に忙しかったころ、
ボクは日本中をグルグルぐるぐると移動し続けていた。
朝、地下鉄に乗って、モノレールに乗って、
飛行機に乗って、JRに乗って、
特急バスに乗って、船に乗って、タクシーに乗って
新幹線に乗って、
東京と大阪、徳島、兵庫へと渡り、
日帰りしたことがある。
通常乗ることのできる乗り物に
一日ですべて乗り尽くした
そんなある日
飛行機に乗っていたとき
うつろうつろしながら目が覚めたら、
何も音が聞こえなくなっていた
小さな窓から穏やかな太陽の陽が差し込み
周りの人々はにこやかに会話をしている
なんども「夢ではないか」とも考えたが
夢ではない
なんだかふんわりして穏やかな感覚になった
なんだかとても幸せな気分・・・
でも、何も聞こえない
「もしかしたら俺は死んだのではないか」
「これは幽体離脱ではないか」
怖くなって生唾を飲み込んだら
バリッといって耳が鳴った瞬間に
音が聞こえる様になった
単なる空気圧のいたずらだった
その飛行機で一瞬味わった
「ふんわりして穏やかな感覚・・・」を
今日このごろ感じている
もしかしてこの感覚は・・・
今度こそ幽体離脱かもしれない