20091125

石原のおっさん



「馬場さんよ、俺は明日お前さんを怒鳴るからな。
部下の前で思い切り喧嘩しようぜ」・・・

上司である石原のおっさんとは毎晩飲んだ。
そして営業の数字が上がるように計画を立てた。

翌朝、「馬場!どうなってるんだ!今月このままの数字で
終わるのかよ、みっともねぇ。部下たちは何をしているんだ」
約束通りにボクは怒鳴られた
「うるせぇな、わかってんだよ。
ちゃんとコイツら仕事してるんだから、黙ってみてろ!」
「わかったよ、馬場さん。本当に(目標数字)行くんだな」
「決まってんじゃネぇか、当たり前だよ」

なんて調子で芝居を打つ。
するとボクと石原のおっさんとの仲をよく解っている
部下はクスクスと下を向いて笑っている。

そんな日々が、ボクの楽しかったサラリーマン時代の
想い出である。

あれから16年、その会社はもう既にない。

その石原のおっさんから少し以前に、電話が来た。
「馬場さんよ、おれ癌かも知れないんだ・・・」
「おー、それは良かったじゃないか、日本が平和になるよ」
「いや本当なんだ・・・死ぬかもしれないんだ」
「だったら、死んでから幽霊になって報告においで」

数日後
「癌じゃなかったよ・・・よかった」
「この死にぞこないめ!同情を買うつもりなら
ちがう手を使えよ」
そう言うと
「あんただけだよ、そう言ってくれるのは・・・
ありがとう」
石原のおっさんが電話の向こうで
泣いているのがわかった。

ボクもほっと胸を撫で下ろした。
幽霊になって報告されても困る

1 件のコメント :

匿名 さんのコメント...

っq

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